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CASBEE-街区

このページではCASBEE-街区の評価ツールのご提供と、概要の案内を行っています。

CASBEE-街区のダウンロード

CASBEE-街区の評価ソフトは、以下よりダウンロードいただけます。 評価マニュアルについては、住宅・建築SDGs推進センター    の図書販売よりご購入ください。

ダウンロード

CASBEE全般にに関する連絡窓口: casbee-info@ibecs.or.jp

   

CASBEE-街区の最新情報

(2023.11.14)
CASBEE-街区評価マニュアル(2023年版)の公表を行いました。これに伴い、本ページにて評価ソフトのご提供を開始致しました。評価マニュアルについては、住宅・建築SDGs推進センター    の図書販売で販売を行っております。

CASBEE-街区とは

CASBEEはその開発当初より、単体建築物のみならず建築群としての環境性能を評価する手法を開発することの重要性が認識されていましたが、2004年12月に都市再生本部決定の「都市再生事業を通じた地球温暖化対策・ヒートアイランド対策の展開」において、「都市再生事業の環境格付」を図ることが謳われ、面的・都市計画的なプロジェクトの評価に適応し得るツールの開発が要請されるところとなりました。そのような動きを受け、2006年7月に、地区スケールに適用可能なCASBEEとして「CASBEE-まちづくり」を公表しました。

その後、東日本大震災を経て、地域の防災性能やエネルギー環境安定化への要請が高まり、更に国においても、「都市の低炭素化の促進に関する法律」(通称エコまち法)が2012年に制定されるなど、地域の環境性能評価に対する周辺状況は大きく様変わりしてきました。このような状況に対応するため、2014年、CASBEE-まちづくりに抜本的な改訂を加え、新たに「CASBEE-街区」が公表されました。さらに、脱炭素社会の実現に向け、運用段階のCO2だけでなく、開発・維持・解体の各段階のLCCO2の排出量削減の取り組みを評価に加えると共に、街区をめぐる技術水準や社会通念・制度の変化に合わせた更新、ESG投資・エリアマネジメント・スマートシティ・DX等への施策に対し、明示的に示すべく検討を行い、新たに作成されたツールが「CASBEE-街区2023年版」です。

CASBEE-街区 開発の目的

CASBEEツールの多く(住宅系、建築系)は単体建築物を評価対象としているが、CASBEE-街区は建築群(単体建築物の場合もあり得る)を含む面的整備プロジェクトを評価対象とするツールである。その開発目的は以下のように整理される。

  1. 一つの街区(原則として街区全体)若しくは複数街区で構成される地区等、ある程度大規模な一団の土地において、統一的な整備意思の下に計画・実施される建設プロジェクトの環境性能を総合的に評価出来るツールを提供すること
  2. とりわけ、建築及び都市・地域における低炭素化施策の導入・実施について重点的に評価すること
  3. 以って街区/地区スケールのプロジェクトを通して、当該面的整備プロジェクトを構成要素とする都市再生・まち再生における総合的な環境性能向上及びサステナビリティ確保に資すること

2014年版刊行以後の我が国の都市、地域の計画・整備に係る状況を見るに、地震や風水害等大規模災害の頻発、COVID-19等により、前回改訂時にも増して地域の安全性能確保、強靱化、更には健康増進・保健機能強化への要請が高まっている。またSDGs(国連の2030アジェンダ、2015年)に代表されるように、持続可能な開発志向はグローバルにも一層重視されるようになった。ツールの実用面から見ても、2014年版のエコまち法準拠方式は現在までに一定の役割を果たしており、今後はむしろ、持続可能な開発内容をより多角的に評価するツールとする必要があった。
このような状況を踏まえ今回2023年の改訂では、評価基準等の時点修正に留まらず、ツール全体を総合的に見直し大幅改訂した。
今般の改訂で従来に比して特に明確に重視した側面は「マネジメント」と、その高度化に資する「スマート化」、そして近年のグローバルな重要課題「脱炭素」である。

仮想境界・仮想閉空間の基本的な考え方

CASBEE-街区は評価の方法論や枠組みについても従来のCASBEE-建築の考え方を継承している。即ち、評価されるべき面的整備プロジェクトに仮想境界を設定し、これによって区切られる仮想閉空間内部の環境品質(QUD)と、仮想閉空間を越えてその外側に達する環境負荷(LUD)という両側面から評価する。


図1 CASBEE-街区の評価対象

評価対象プロジェクトの「対象区域」設定の考え方

仮想境界の設定に際し、そのベースとなるべき一団の空間の広がり(もしくは境界線)の意味で「対象区域」と表すことにする。CASBEE-建築、住宅の場合は、対象区域=当該プロジェクトの建築敷地(敷地境界)とすることが明快である。これに対して街区/地区スケールでは複数の建築敷地や非建築敷地も含み得ることから、対象区域=建築敷地とすることは適当ではない場合が多い。本ツールでは、「統一的な整備意思」を最も端的に反映し、客観的に認識しやすい対象区域設定の原則を、以下のように定める。

  1. CASBEE-街区において、評価すべきプロジェクトの区域設定は、原則として当該プロジェクトの計画・整備に適用されている各種法令・制度・手法等で定められた計画区域・事業区域等とする。
  2. ここで適用が考えられる制度・手法として、市街地再開発事業、土地区画整理事業、都市再生特別地区、各種の地区計画、エコまち法による集約都市開発事業、一団地の総合的設計、連坦建築物設計制度、総合設計制度、住宅市街地総合整備事業、優良建築物等整備事業、等がある。
  3. ただし例外として、街区/地区スケールでの総合的環境性能評価の観点から妥当と判断される場合には、上記の区域外の隣接部分を評価対象範囲に取り込むことや、逆に上記の区域の一部を評価対象範囲から除外することも可能である。本項例外を適用する場合、評価者はその設定理由を明示しなければならない。

活用方法

CASBEE-街区の主な活用法として例えば下記の4つが挙げられる。

  1. 面的整備プロジェクトにおける環境配慮計画ツールとして活用
  2. 環境ラベリングツールとして活用
  3. 街区/地区スケールでの、省エネ改修・サステナビリティ改善などの計画・評価ツールとして活用
    これら1.~3.は、行政の制度的運用と関連づけられれば、個別の面的プロジェクトにおける環境配慮と持続可能な開発推進への強力なインセンティブとなることが期待される。
  4. 都市計画の全般にわたって、サステナブルな街づくりの観点から補強するツールとして活用
    ① 個別には、市街地再開発事業、都市再生特別地区、各種の地区計画、一団地の総合的設計、連担建築物設計制度、優良建築物等整備事業、総合設計、等の諸制度の対象プロジェクト個々における総合的な環境性能とサステナビリティの向上を誘導
    ② 総合的には、①により一定レベルの環境性能が確保された面的整備事業を先導的拠点として、都市全体の持続可能性の計画的な維持・向上を誘導
  5. 総じて、本ツールは面的整備プロジェクトに関わる多岐にわたるステークホルダー間のコミュニケーションツールとなることが期待される。

評価項目および環境効率

他の多くのCASBEEツールと同様に、Q(環境品質)とL(環境負荷)それぞれを別個に評価・採点する。QUD(街区に関わる環境品質)とLUD(街区における環境負荷)は、それぞれに3分類の大項目で構成されており、対象区域の評価結果は、それらの6分野毎の得点をバーチャートやレーダーチャートで多角的に示す。更に全項目を下式のように総合化して、街区の環境効率(BEEUD)に指標化する。

LはまずLR(環境負荷低減性)として評価することも従来のCASBEEと同様である。
QUD1 からQUD3 の各大項目は3~6項の中項目で構成し、更に各中項目は必要に応じて適宜小項目と、その下に細項目を置き、更に一部の細項目下には詳細な評価項目を配置する構成としている。各細項目(細項目下に詳細な項目が設定されている場合はそれら詳細な項目)ごとに予め設定された基準により5段階で採点する。各項目の採点結果は、詳細な項目・細項目・小項目の順に算術平均で積み上げ、最終的に中項目間の重み係数による加重調整を経て各大項目の評価レベルを決定する。

採点基準の考え方

各評価項目の採点基準は以下の考え方にしたがって設定されている。

  1. レベル1~5の5段階評価を原則とし、基準となる得点はレベル3とする。 ただし、測定の実用性の観点から、項目によっては3段階(レベル1、3、5あるいはレベル2、3、4等)または4段階あるいは例外的に2段階(レベル1、3等)の評価とすることがある。
  2. レベルの考え方は、各小項目の特性に応じながら、基本的には レベル1:関係法令等が要求する最低限の必須条件を満たしている場合 レベル3:評価時点の一般的な技術・社会水準に相当すると判断される場合 レベル5:評価時点で一般的には最高の技術・社会水準と判断される場合 として、レベル2、4はそれぞれレベル1と3、レベル3と5の中間的な水準とする。法令等が要求する必須条件と一般的な技術・社会水準が同等の項目はレベル3とする。
  3. 「社会水準」については、関係法令による規定の有無に関わらず当該プロジェクトが周辺地域に対して配慮する社会的貢献等の程度も含めて判断する。

評価項目の構成

QUD:街区に関わる環境品質

1)QUD1:環境
評価対象の環境品質を自然環境、生活環境、建築物における環境配慮、環境性能に関するスマート化の4つの中項目により評価する。最初の中項目「自然環境」では、動植物や地形等の自然資源の保全度合や生物多様性の確保につながる生物生息空間の質を評価する。次の「生活環境」では、緑や街区における熱環境(微気候)への配慮を評価する。「建築物における環境配慮」では、街区内の建築物の環境性能を代表指標とする。具体には建築・不動産系CASBEEツールの適用程度やそれらCASBEEの評価結果をもって評価する。最後に「環境性能に関するスマート化」では、ICTやデータ活用により、街区の環境性能を維持向上させる取組みを評価する。

2)QUD2:社会
対象区域自体の社会的性能を評価すると同時に、当該プロジェクトの実施もしくはその存在が、周辺地域の社会的品質向上に貢献する程度を評価する。6つの中項目で構成し、最初の「ガバナンス」では対象区域の開発に係る法制的適正度及び、周辺地域社会との融和も視野に入れたエリアのマネジメントの充実度を評価する。次の「生活利便」「健康福祉」では、居住者や就業者の生活利便性の向上および健康や医療福祉に資する各種のサービス施設へのアクセス性を評価する。「安全安心」では居住者や来訪者の安心感に直結する街区の防災・防犯性能や、地域社会の持続性を支える強靭性・頑健性などを周辺地域への貢献も含めて評価する。「包摂性」では、地域の価値向上の観点から歴史・文化的資産活用もしくは創造や、持続可能な開発をめざした多様な住宅の供給、ユニバーサルデザインへの対応等を評価する。最後に「社会性能に関するスマート化」では、ICTやデータ活用により、街区の社会性能を維持向上させる取組みを評価する

3)QUD3:経済
評価対象自体が備える経済的ポテンシャルを評価すると同時に、当該プロジェクトによる周辺、更には都市全体の経済的側面での価値・機能向上への貢献可能性を評価する。4つの中項目で構成し、最初の「経済基盤」では、都市計画的な観点からの立地・敷地ポテンシャル活用程度と、経済活動を支える交通インフラの整備状況やサービスの充実度を評価する。次の「ヒューマンキャピタル」では、プロジェクトの経済的力量の基礎としての(常住・滞在)人口と、学習機会の充実度を評価する。「活性化方策」では、経済活動の活性化を目指す仕組みとして雇用創出の取組みや多様な働き方への対応度合、地場産業振興への取組みを評価する。最後に「経済性能に関するスマート化」では、ICTやデータ活用により、街区の経済性能を維持向上させる取組みを評価する。

表1 QUD:評価項目一覧

LQUD:街区における環境負荷低減性

1)LQUD1:エネルギー
この大項目は、対象区域におけるエネルギー使用量の削減への取組みを評価するもので、4つの中項目で構成する。「都市・街区エネルギーの効率化」では、街区単位での一次エネルギー消費量の削減度合いをBEI(Building Energy Index)値により評価する。その評価の基準については「建築物省エネ法」(建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律)による省エネ基準だけでなく、以前の「省エネ法」(エネルギーの使用の合理化等に関する法律)の基準も使用可能としている。次に「再生可能エネルギーの利用」では街区内の建物単体での再生可能エネルギーの利用の有無を、「未利用エネルギーの利用」では街区内での未利用エネルギー(下水熱・地域冷暖房排熱など)の利用の有無を評価する。「エネルギーマネジメント」では、エネルギーに関して街区ユーザーへのサービスとマネジメントの充実度を評価する。

2)LQUD2:社会
対象区域が開発もしくは運用される際に、より広域レベルで当該地区を支えている基盤条件やインフラ等に与える負荷をいかに低減しているか、その取組みを評価する大項目で3つの中項目で構成する。「土地資源」では、ブラウンフィールド活用の観点から土壌汚染への対応状況や地盤沈下の抑制への配慮を評価する。「水資源」では、街区全体での上水使用量の削減や下水道への負荷低減に対する取組みを評価する。「資源循環」では、建材の代替資源活用の度合いや、廃棄物の削減および再資源化への取組みを評価する。

3)LQUD3:周辺環境
対象区域外に対する各種の負の環境影響の防止・抑制への取組みを評価するもので、3つの中項目で構成する。「地球温暖化への配慮」では、温室効果ガスの削減に関わる取組みを評価する。「交通負荷の削減」では、自動車交通量の総量削減とともに対象区域周辺を含めた広域的なマネジメントや計画による配慮を評価する。「環境阻害の削減」では、ヒートアイランドの緩和や対象区域外に影響を及ぼす各種環境阻害要因の抑制への取組みを評価する。

表2 LQUD:評価項目一覧

評価結果表示シート

評価結果表示シートでは、Q(街区に関わる環境品質)とLR(街区における環境負荷低減性)さらにBEE(街区の環境効率)の結果がグラフと数値で表示される。また、対象プロジェクトの関連情報を1枚のシートに要約して表示し、CASBEE-街区の評価結果が一目で認識しやすいようになっている。同シートの全容イメージは図2に示すとおりであり、CASBEE-街区の特色を表示しながら、紙面デザインの大枠はCASBEEファミリーとして他の評価ツールと統一されている。


図2 CASBEE-街区の評価結果シート


CASBEEの使用に関する注意

CASBEEによる評価結果については、当財団で実施しているCASBEE評価認証制度による認証結果を除き、当方では一切の責任を負いかねます。認証以外の自己評価の結果を第三者に示す場合には、「この評価結果は○○による自己評価による結果です」などのような注意書きを付記して頂きますよう、お願いいたします。また、パンフレットやウェブサイト、広告物等にCASBEEの名称を使用する場合には、当財団に登録商標の使用許諾申請を行う必要があります。詳しくはこちらをご覧下さい。