評価の仕組みと環境性能効率(BEE)
CASBEEによる評価のしくみ
(1)2つの評価分野:QとL
CASBEEでは、敷地境界等によって定義される「仮想境界」で区分された内外2つの空間それぞれに関係する2つの要因、すなわち「仮想閉空間を越えてその外部(公的環境)に達する環境影響の負の側面」と「仮想閉空間内における建物ユーザーの生活アメニティの向上」を同時に考慮し、建築物における総合的な環境性能評価のしくみを提案した。CASBEEではこれら2つの要因を、主要な評価分野Q及びLとして次のように定義し、それぞれ区別して評価する。
Q(Quality) 建築物の環境品質
「仮想閉空間内における建物ユーザーの生活アメニティの向上」を評価する
L(Load) 建築物の環境負荷
「仮想閉空間を越えてその外部(公的環境)に達する環境影響の負の側面」を評価する
<仮想閉空間の概念に基づく「Q 建築物の環境品質」と
「L 建築物の環境負荷」の評価分野の区分>
(2)CASBEEで評価対象として選んだ4つの主要分野とその再構成
CASBEEの評価対象は、以下の4分野である。
- (1) エネルギー消費(energy efficiency)
- (2) 資源循環(resource efficiency)
- (3) 地域環境(outdoor environment)
- (4) 室内環境(indoor environment)
その結果、評価項目は下図に示すようなBEEの分子側Q(建築物の環境品質・性能)と分母側L(建築物の外部環境負荷)に分類された。そして、QはQ1:室内環境、Q2:サービス性能、Q3:室外環境(敷地内)の3項目に分けて評価し、Lは、L1:エネルギー、L2:資源・マテリアル、L3:敷地外環境の3項目で評価する。
<評価項目のQ(建築物の環境品質)とL(建築物の環境負荷)による分類・再構成>
(3)環境性能効率(BEE)を利用した環境ラベリング
前項で整理したように、QとLの2つの評価区分を用いた環境性能効率(BEE)は、CASBEEの主要概念である。ここで、BEE(Built Environment Efficiency)とは、Q(建築物の環境品質)を分子として、L(建築物の環境負荷)を分母とすることにより算出される指標である。
BEEを用いることにより、建築物の環境性能評価の結果をより簡潔・明確に示すことが可能になった。Qの値が横軸のLに対して縦軸にQがプロットされる時、グラフ上にBEE値の評価結果は原点(0,0)と結んだ直線の傾きとして表示される。Qの値が高く、Lの値が低いほど傾きが大きくなり、よりサステナブルな性向の建築物と評価できる。この手法では、傾きに従って分割される領域に基づいて、建築物の環境評価結果をランキングすることが可能になる。グラフ上では建築物の評価結果をBEE 値が増加するにつれて、Cランク(劣っている)からB-ランク、B+ランク、Aランク、Sランク(大変優れている)としてランキングされる。
<BEEに基づく環境ラベリング>