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CASBEEの概要

CASBEEとは

「CASBEE」(建築環境総合性能評価システム)は、建築物の環境性能で評価し格付けする手法である。省エネルギーや環境負荷の少ない資機材の使用といった環境配慮はもとより、室内の快適性や景観への配慮なども含めた建物の品質を総合的に評価するシステムである。

CASBEEは、2001年4月に国土交通省住宅局の支援のもと産官学共同プロジェクトとして、建築物の総合的環境評価研究委員会を設立し、以降継続的に開発とメンテナンスを行っている。

CASBEEの特徴は、建築物の環境に対する様々な側面を客観的に評価するという目的から、

  1. 建築物のライフサイクルを通じた評価ができること
  2. 「建築物の環境品質(Q)」と「建築物の環境負荷(L)」の両側面から評価すること
  3. 「環境効率」の考え方を用いて新たに開発された評価指標「BEE(建築物の環境性能効率、Built Environment Efficiency)」で評価すること

という3つの理念に基づいて開発されている。また、評価結果が「Sランク(素晴らしい)」から、「Aランク(大変良い)」「B+ランク(良い)」「B-ランク(やや劣る)」「Cランク(劣る)」という5段階のランキングが与えられることも大きな特徴である。

CASBEEには、図1に示すような評価する対象のスケールに応じた建築系(住宅建築、一般建築)、都市・まちづくり系(まちづくり、都市)の評価ツールがありこれらを総称して「CASBEEファミリー」と呼んでいる。

図1 CASBEEファミリーの構成

 

建築物のライフサイクルと4つの評価ツール

CASBEEは建築物のライフサイクルに対応して、

  • CASBEE-企画
  • CASBEE-新築
  • CASBEE-既存
  • CASBEE-改修
の4つの評価ツールから構成され、デザインプロセスにおける各段階で活用される(図2)。これら4つの基本ツールおよび次節に示す個別目的への拡張のためのツールを総称して、「CASBEEファミリー」と呼んでいる。各ツールにはそれぞれ目的とターゲットユーザーが設定されており、評価対象とする様々な建物の用途(事務所、学校、集合住宅等)に対応できるように設計されている。

図2 建築物のライフサイクルとCASBEEの4つの基本ツール

CASBEE-企画(非公開)
プロジェクトの企画(プレデザイン)の際に、オーナーやプランナーを支援することを目的とする。大きくは、以下の二つの役割を想定している。

  1. プロジェクトの基本的な環境影響等を把握し適切な敷地選定を支援する。
  2. 企画段階でのプロジェクトの環境性能を評価する。

CASBEE-新築
設計者やエンジニアが、設計期間中に評価対象建築物のBEE値等を向上させるための自己評価チェックツールであり、設計仕様と予測性能に基づき評価を行う。専門家による第三者評価を行えば、ラベリングツールとしても活用される。

CASBEE-既存
既存建築ストックを対象とする評価ツールで、竣工後1年以上の運用実績に基づき評価する。資産評価にも活用できるものを意図して開発された。

CASBEE-改修
「CASBEE-既存」と同様、既存ストックを対象とし、今後重要性が増すESCO事業やストック改修への利用も視野に入れており、建物の運用モニタリング・コミッショニングや改修設計に対する提案等に活用できるツールである。


 

個別目的へのCASBEEの活用

CASBEEの基本ツール群を発展させ、多様な個別目的にも対応可能なものとしている。

(1)戸建住宅への適用
CASBEEの基本ツールの評価対象に集合住宅は含まれているが、戸建住宅は含まれない。戸建住宅を評価するためのツールとして「CASBEE-戸建(新築)」と「CASBEE-戸建(既存)」を開発した。

(2)集合住宅の住戸部分に対する評価
集合住宅は建物全体については、CASBEE-建築(新築)で評価されるが、住棟の中の位置によって性能が変わると考えられる住戸単位の性能については評価することができない。住戸ごとの環境性能を評価するためのツールとして「CASBEE-住戸ユニット(新築)」を開発した。

(3)短期使用建築物への適用
仮説建築物のように短期間の使用を意図して建設される建物について評価を行うツールとして「CASBEE-短期使用」が開発された。これは「CASBEE-建築(新築)」の拡張版として位置づけられている。

(4)地域特性への配慮
「CASBEE-建築(新築)は、前述のように地方自治体での建築行政にも利用できる。活用する自治体では、気象条件や重点施策等、各地域の事情に合わせ、重み係数などの変更を行い使用することができる。各自治体では、省エネルギー計画書と同様に建築確認申請時に行政への届出を義務づけることで、その地域に建設される建築物の環境性能向上に役立てることができる。
一例として、名古屋市建築物環境配慮制度による「CASBEE名古屋」が2004年4月より実施された。なお、地域特性に対するフレキシビリティはCASBEEファミリーに共通のものと考えてよい。

(5)ヒートアイランド影響への詳細評価
東京や大阪等の大都市圏ではヒートアイランド現象に関する問題が深刻化している。CASBEE-ヒートアイランドは、建築物におけるヒートアイランド現象緩和への取組みを評価するツールとして開発された。これは基本ツールに含まれるヒートアイランドに関する評価項目に対して、より詳細かつ定量的な評価を行う役割を持つ。

(6)不動産市場における活用
環境配慮建築物の普及を促進する上では、建築物の環境対策を不動産の付加価値向上に結び付ける仕組みが必要とされる。特に既存建築物については、建物所有者や、投資家、建物利用者、管理者など、新築時と異なったステークホルダーが対象となるため、これらの人々が利用しやすい評価の仕組みが必要とされる。このため、評価対象を特に不動産の付加価値向上に関連する項目に絞り込み、評価基準を大幅に簡易化した「CASBEE-不動産」を開発した。評価対象は、竣工後1年以上の運用実績のある既存建築物である。

(7)地区スケールへの拡張
CASBEEの基本ツールは、単体建築物を評価対象としているが、建築物が群となった場合の環境性能を評価することも重要である。最近の都心再開発に多く見られるように、周辺の街区を一体として計画を行う場合、環境品質(Q)の向上が期待される。たとえ棟ごとに建築主が異なっても街区内の建物に対して共通の制約を課すことにより、地区全体での環境性能向上に取り組むことができる。「CABSEE-街区」は、このような「都市再生」を通じた取り組みや、複数建物を含む地区一帯での取り組みを評価対象とする。

(8)都市スケールへの拡張
地区スケールを越えて都市スケールにおける環境性能を評価するツールとして「CASBEE-都市」を開発した。これは地方公共団体の環境施策を支援する目的で開発されており、行政が自らの環境施策とその効果を市区町村の行政区単位で評価するものである。
CASBEE-都市には、標準版以外に、CO2排出量などを評価者が詳細に計算し評価に反映させることができる詳細版がある。また、日本以外の世界の都市を評価対象とする「CASBEE-都市(世界版)」(パイロット版)がある。

(9)一般向けチェックリストの開発
一般的に、CASBEEの評価を実施するためには専門的な知識や技能が必要となるが、建築物の環境配慮はそれを使用する一般の方や住まい手の方が係ることも必要であり、専門技術者以外にCASBEEを普及させることも大きな課題である。これに対応するため、以下のチェックリストが開発されている。
「CASBEE-健康チェックリスト」は、居住者の健康に影響する住まいの要素について居住者自らがチェックするツールであり、健康・快適性に関する住まいの性能を簡単に把握することができる。「CASBEE-すまい改修チェックリスト」は、耐震性や省エネ性、バリアフリー性などに関する住まいの性能を、居住者が簡単にチェックするためのツールであり、その後の改修に繋げることを目的としている。「CASBEE-レジリエンス住宅チェックリスト」は、住まいと住まい手の自然災害に対する対策度・対応度をチェックするためのツールであり、防災対策の有無について住まい手自らが気づくことにより、対策を促進させることを目的としている。
「CASBEE-感染対策チェックリスト」は、オフィス版は計画段階、運用段階で感染対策の導入状況を確認できることを目的に、住宅版は感染対策を考慮した生活行動のポイントに気づき、関連した住宅の備えを考える手がかりにして戴くことを目的としている。

表1 CASBEEの拡張ツール


 

研究体制

CASBEEの研究開発は、政府支援のもとに産官学共同プロジェクトとして立ち上げられ、一般社団法人日本サステナブル建築協会内に設置された、建築物の総合環境評価研究委員会および傘下の小委員会(下図参照)がその主体的な運営にあたっている。

図3 CASBEEの研究体制組織図(2024年7月現在)